一気に頬が上がる。

親友に言われたその一言だけで、いつもと同じ学校生活が別物になった。


「るん、るん、るんっ」

「……機嫌いーね。なんかいいことあったの?」


屋上の扉を開けた瞬間、安堂くんにそう聞かれた。

あたしは小指を立てた状態で、安堂くんと向き合う。


「何故、それを!?」

「……隠すつもりはないんだ。だって、午後から急にウキウキしてたじゃん」

「うふふ。ま・ぁ・ねー?とは言っても、安堂くんにとっては全然大したことじゃないんだけどねぇ」


頭を掻いて、照れ笑い。

安堂くんには大したことじゃなくても、あたしにとっては世界が変わってしまうほど素敵な話。


「…ふぅーん。誰かに何か褒められたとか?それとも告られた?」

「何故それを!?」


小指を立てたまま、大きく目を見開く。

安堂くんは眉間にしわを寄せた。


「告られたの?」

「…え?いやいや違う!あたしが告られるわけないじゃん!ちょっといい噂聞いただけだよ」


自分で言って自分に照れて、再び頭を掻く。


「……噂なんてアテにならないからね。特に女子の噂は」


そんなあたしに、この男は冷たく言い放つ。

そっぽを向いて。

こういう時の安堂くんは憎たらしい程、冷たい。


「夢を見るくらいいいじゃん!」

「そんなこと言ってるからいつまで経っても彼氏出来ないんでしょ?」

「………!」


数日前、うっかり失言してしまった。


『どうしてそんなに好きだったのに別れたの?』


って、図々しくも聞いてしまった。

夕陽を浴びて校庭を見つめる安堂くんの横顔があまりに寂しそうで、気が付けば口から出ていた。


その時に言われた。


『…小林って彼氏いたことないでしょ』


という、ボディに右ストレート。