花火が終わると、歩道橋の下、たくさんの人の流れができているのに気づいた。
「降りたくないなー…、この下」
安堂くんはすでに顔を歪めている。
あたしは下りてもいいかな。
人込みに紛れて、たくさん安堂くんとくっつけるし。
「でも、降りないと帰れないし!」
帰れなくていいなら、それでもいいけどっ。
もう、どっちに転んでも幸せ。
全身がはしゃいでいる。
カランコロンと下駄を鳴らして、二人手をつないで階段へと差しかかった。
「あー、りんご飴食べるの忘れちゃったー」
「小林っていつも何か忘れるよね」
「遊園地ではソフトクリームも食べ忘れたしね」
「気づいてたんだ」
「…家に帰ってからね」
あたしのペースに合わせて、安堂くんもゆっくりと階段を下りてくれる。
「だけどやり残したことがある方がいーよね。また行かなきゃ、って思えるし。
海にも行きたいでしょー、遊園地もだし、受験終わったら水族館とか!デートスポットは全部制覇したい…」
あたしが話していると、ふいに安堂くんが立ち止まったのに気付いた。
「どうしたの?降りたくないのは分かるけど、降りなきゃ――…」
安堂くんへと視線を向けると、その瞳はまっすぐに前を見つめていた。
いや、下方を。
まっすぐに、階段の下を見つめていた。
「…どう、したの…?」
びっくりするほど、綺麗な横顔だった。
絵の中から出てきたような、彫刻みたいな横顔。
その視線を追うように、あたしは階段下へと視線を向けた。

