もしかしたら、気付かずに通り過ぎてしまった、安堂くんの優しさや、想いってものも、もしかしたらもっといっぱいあったのかもしれない。
……勿体ない。
それ、全部ファイリングして永久保存してたいくらいなのに。
そう思うと、安堂くんと繋がる手にギュッと力が入った。
二人で歩道橋の階段をあがった。
その頃には徐々に辺りが暗くなり始めて、ただそれだけでわくわくした。
ここが穴場だと、数組の人が隣に立っていた。
浴衣を着て、彼に寄り添う彼女さん。
あたし達よりは少し年上で、二人言葉にできない落ちつきと温かさがあった。
でも、二人の距離はとても近くて、お互いを愛しく思い合っているのが伝わってきた。
(あたしもいつかこういう関係になりたい…!)
勝手に隣のカップルに理想注入。
二人で袋を広げながら、そんなことを考えていた。
「ギャっ!オムそば、左に寄ってる!」
「小林って、左に寄せるの得意だね」
「って、これ持ってたの安堂くんじゃん!!」
こんな些細なことでも笑い合える。
目が合うと、お互いちょっとだけ口元がゆるんで、なんだかくすぐったい気分。
「あーあ…」
「早く食べないと花火始まっちゃうよ?」
安堂くんに促されて、左に寄ったオムそばを二人で食べた。
一つのものを、二人で半分こ、ってやっぱいいよね!
安堂くんの耳元で光る、ピアスを見つめた。

