「…!! だ、だって!安堂くんがどっちもいーって言うから…!」
「どっちかでいーって意味だったんだけど」
どっさり買った袋を持って、安堂くんがあたしの手を引く。
カランコロン。
下駄の鳴る音も夏の風物詩。
「あー…、楽しみだなぁ。毎年この花火大会にはきてるけど、やっぱり違うと思うのよね」
「カレシとだと?」
「そう!」
「……俺、どうかな。この花火大会、初めてだから」
「えっ!? 初めて!?」
「あんまり好きじゃないし」
「だ、だって……!」
先生、とは?
――と、喉まで出かかった言葉をあたしは呑み込む。
「うちのベランダからでも見れるしね」
「えっ!!!」
「あれ、言ってなかった?」
「聞いてないよ!! それなら、安堂くんちのベランダからでも…!」
それならもしかしたら、そのまま初えっち、なんて…っ。
「そんなことはないよ。小林、ちょっとサカりすぎ」
「!!」
小声で言ったことまで全部聞かれていて、あたしは瞬時に赤くなった。
「それじゃ、こういうこと出来ないじゃん。焼きそばにオムそばのコラボとか」
安堂くんが袋を持ち上げて笑う。
確かに、そうだけど…。
先生とはそこで見たの?
って、そういうこと、考えるのやめるんだってば!!
心の中でぶんぶんと頭を振った。
「人込み、覚悟はしてたけど本当に凄いね。これを毎年経験してる小林ってすごいよ」
「……!」
そっか。
安堂くん、人込み苦手なのに、あたしのためにわざわざ、来てくれたんだ。
それに、誘ってくれたのも、安堂くんだったし…。
気づかずに通り過ぎてしまいそうな、そんな些細な出来事からも、安堂くんにちゃんと想われてるって実感した。
あたし、安堂くんからお墨付きなほど鈍感だ。

