安堂くんが、手帳の紙を持って、あたしに言った。
「……もう、顔、合わせてもらえないかと思って…。安堂くん、怒ってたし…」
「そりゃ誰だって怒るでしょ。あんなこと言われたら」
「――――……っ」
止まっていた涙腺が再び緩む。
ぼやける視界の中、涙だけはこぼさないようにと、ギュッと喉を動かした。
「ごめんなさ…っ」
無理だった。
言葉と一緒に涙がこぼれた。
「……でも。謝らないといけないのは、俺も同じ。あんなことして、本当にごめん」
玄関でしゃがみ込むあたしの元に、安堂くんが来てくれた。
そして、そっとあたしの頭を自分の胸元に寄せてくれた。
「それに…。もとはと言えば、俺が変なこと言ったから。自分のせいだって分かってたのに、カッとしちゃって…。
ごめんな…?怖い思い、させて…」
落ちてくる優しい言葉たちに、ますます涙が溢れた。
いつも、いつもいつもいつも。
安堂くんはこんなにも優しい。
分かってるはずなのに、あたしはよくばりだ。
もっともっと、って。
安堂くんの気持ちを欲しがってる。
独り占め、したがってる。
「…ちがうよ…!あたしが、欲張りになっちゃったから…!」
「本当は、…きっと。俺の方が欲張りだと思うよ。出来るなら、今すぐにでも小林のこと全部独り占めしたいって思ってるよ」
その言葉に、ぽろりと涙がこぼれおちた。
「…だったら……」
「でもダメ。今そういうことしたら、俺きっと大変なことになっちゃう。だから少しずつ、…ゆっくり、進んでいきたいんだ。
小林のこと、大切だから」
真っ直ぐに見つめていたあたしに、安堂くんもまっすぐにそう言ってくれた。
再び涙が込み上げて来て、ゆらゆら揺れる瞳で力いっぱい頷いた。
その言葉に、不安も悲しみも、全て流されていく心地がした。

