「……………え?」

「――あ? ……ハッ!!!!」


再び、我に返って息を呑んだ。


「いや!!あの!!これは!!」


掴んでいた胸倉を離す。

両手を広げて降参のポーズをする。

寝不足と極度の緊張のせいで、トンデモナイことを口にしてしまった。


「え、なに? 小林、誰かにキスされたの?」

「さささされてない…っ!!!」


未遂で終わった。

触れ合いそうな距離に、危うく息が止まりかけた。

……つまりは、犯人は安堂くんなんだけど、頭の中が昨日のことでいっぱいだなんて、絶対にバレたくない。


「いや、もう、今のは忘れてください…っ! ただの言葉の綾と言いますか、モテたことのない女の悲しい妄想っていうか、なんていうか、そのあの…っ」


言葉にすればするほど、墓穴を掘っているのが分かっている。

分かっているのに、止められない。

自動運転かのように、次から次に言葉が溢れてくる。