あたしはいつも、肝心なところで、肝心なことを、間違える。
3週間、安堂くんを一人にしていたら、女子が放っておかないに決まっている。
彼は学年1のモテ男なんだ。
みんなが彼氏にしたくて、したくて堪らない男なんだ。
破局説が出た時に、対処すべきだった。
自分のエゴのために、見栄のために、こんなこと、するべきじゃなかった。
もしかしたら安堂くんは、あたしじゃなくてもいいって思ってしまったのかもしれない。
傍にいるのは、あたしじゃなくてもいいって。
新しい恋は、他の子とでも始められるって。
あの笑顔を見てしまった以上、真相を突き止めに行くことが出来なくなった。
笑顔は特別。
安堂くんの笑顔には、特別な意味が込められている。
あたしはそれを誰よりも―――。
きっと誰よりも知っている。
一人、渡り廊下で、手すりに腕を乗せて、佇んでいた。
廊下でも教室でも、安堂くんと1組の女子の噂を聞かない場所はなかった。
「…チェリーちゃん」
ぐすっと洟(はな)をすすると、背後から声を掛けられた。
「……桜田くん」
「これ」
桜田くんがあたしの横に立って、缶ジュースを差し出した。
「…ガイコツフェイスの上に、まぶたまで腫れてたら……、ほんとのお化けになっちゃうよ」
桜田くんはそう言うと、汗をかいている缶ジュースをあたしの頬に押し付けた。
「ひゃっ」
冷たくて、ビックリした。
でも、その冷たさが心地好かった。
「……恋愛ってさ、難しいよね」
自分用にも買ってきたらしい缶ジュースを、桜田くんはぷしゅっと開けた。
缶ジュースに口をつけながら、桜田くんが続ける。
「ほんとどうやったら、おっぱい大きくしようとして、そんなガイコツフェイスになるの?」
―――――ガン。
「は、はぁ…!?」
突然何を言い出すんだ。
お、おっぱ…!?
あんぐりと口を開けたあたしに、桜田くんはきょとんとした顔をする。
「あれ?おっぱい大きくしよーって頑張ってたんじゃないの?授業中、自分で揉んでたじゃん」
「揉んでませんっ…!!!」
全身で否定した。
この男、何を言っているんだ!!
「あたしはそっちの努力はもう、諦めたんです…!! だからせめて、せめて…っ!!」
せめて、痩せて綺麗になろうとして…。
安堂くんに触られた時に呆れられないよーに、って…、思って。
でも、その前に――…。
「そらそうだよー、チェリーちゃん~!おっぱいなんて自分で大きくするもんじゃないでしょー?やっぱここは、アンドーにだね?ん?こう……
……て、チェリーちゃん…?」
「………っ…」
「チェリーちゃん!?」

