残り1キロとなってからが、なかなか痩せない。
もう、残りも数日しかないというのに、どうしよう。
そんなことを考えている間に、6時間目の授業が終わった。
「なー、チェリーちゃーん」
虚ろな目で、どうしようかと悩んでいると隣から声をかけられた。
今日も金髪、桜田くんだ。
「…なに?」
ぼんやりと視線を向けるあたしに、桜田くんはこしょりと言った。
「…アンドー、新しい彼女が出来たってマジ?」
「………………、
――――――――、
―――――えっ!?」
大声で立ち上がって、桜田くんと向き合う。
「う、嘘でしょ…!? あたし聞いてない……!」
「さっき、廊下で聞いたんだけどもー。何やら1組の女子がOKもらった?とかで」
「し、知らないっ!あたし、知らないっ!!!」
座っている桜田くんの胸倉を掴んで、思いきり揺さぶる。
「や、俺も知らないから、チェリーちゃんに聞いてんだけど…っ。別れたってマジなの?確かにチェリーちゃん、こんなに細くやつれちゃってるけど」
「キャアア…!!」
突然、ウエストを触られて、あたしは悲鳴を上げた。
「あのぽよぽよがよかった頬も、こんなに削ぎ落ちて…」
あたしの悲鳴なんてお構いなしに、桜田くんが頬を触る。
「な、なにするのよ…っ」
頬を押さえ、慌てて桜田くんから飛びのいた。
「安堂くーん」
「―――!」
ふいに廊下から、その名前が聞こえてきて、振り返る。
(…あっ!)
廊下に安堂くんが立っていた。
安堂くんがこちらを見ていたので、あたしは桜田くんに見せ付けてやろうと手を振った。
あたし達は別れてなんかない。
安堂くんは1組の子と付き合ってなんかない。
久しぶりに目が合って、あたしは喜んで手を振った。
だけど安堂くんは無反応のまま、顔を背けた。
手は振り返してくれないにしろ、もうちょっと…。
もうちょっと他に、反応ってものが……。
それを見ていた桜田くんが言う。
「ほら、今の子だよー?アンドーにOKもらったっていう1組の子」
「!!!」
桜田くんの言葉にあたしは慌てて窓から顔を出した。
その背中を見つめる。
隣の女の子はふわふわのパーマをなびかせて、安堂くんの横を歩いていた。
「――――……っ」
笑顔で安堂くんに話し掛ける女子。
しかも、あの、安堂くんが。
あの、安堂くんが。
笑顔で話をしていた―――。

