『バカね、それじゃ痩せられないわよ。目標を設定しなきゃ!』
ナッチにそう言われ、あたしはマイナス5キロに設定した。
夏休みまで3週間。
あたしは、本気だ。
そんな決意を胸に、あたしは昼休み、屋上に上っていた。
初夏を感じさせる爽やかな風が、頬をかすめる。
日差しを避けて、二人並んで、屋根の下に座っていた。
よくよく安堂くんを見てみると、凄く、細い。
あんなに食べてるのに、甘党のくせに、余計なお肉は一切ついていない。
(腕とかはちゃんと男の子だけど)
ますます自分が不釣り合いな気がした。
安堂くんがカッコイイと騒がれているのは、顔立ちだけじゃない。
もう、その全てがカッコイイんだ。
制服の着こなしから、髪の毛の先まで。
…そんな人が彼氏。
そう思うと、うっとりする。
…いや!
今はうっとりしている場合じゃない!
「………なに、顔芸してんの?」
それを見ていたらしい安堂くんが、呆れた顔であたしを見ていた。
「…食べないなら貰うよ」
「あっ!!! あたしのから揚げ!!!」
最近の安堂くんは、こうやって、すぐさま人のおかずを取る。
「それは最後に食べようと…!!」
――――ハッ!!!
そこで気が付く。
そういえばあたし、安堂くんと一緒にいるようになって……。
(食い意地が…!)
前より一層、張ってきたような気がする。
だってこの人が、大食漢なんだもん!
おいしそうに食べるんだもん!
あたしを誘惑するんだもんっ!
あたしは箸を握り締め、から揚げを取った安堂に言った。
「…いいわよ…!たーんと、お食べなさい…!」
豚の原因は、この男かっ!!!!

