それからというもの。

『安堂くんはどんな顔をするのかしら』

とか、

『どんなセリフを言ってくれるのかしら』

とか、ナッチが暴走を始めた。


(そのせいで、昼休み、安堂くんの顔、見れなかったし!)


そりゃ、もちろんそんなことを考えないでもないんだけど、

むしろ、前までは生きた化石を恐れてたんだけど…。

でも、今は何かが違う。

簡単に、そんなこと、出来ないって思う。

目が合うだけでもドキドキして、キスする度に心臓が止まりそうになるのに―――。


(それ以上近付いたら、多分あたし、破裂しちゃうよ…)


ドカーン、って。

きっとあたしの心臓、破裂しちゃう。


「………………。」


それに、あたし。


(胸がなぁ~~…)


付き合う前だけど、胸が大きくなるための本とか貰っちゃってるし。

安堂くん、お人形みたいな顔して、エロだし。


「…………………っ」


自分の胸を見つめて、あたしはうなだれる。

―――それに。

先生は……、先生とは……。


(3年、だもんなぁ…)


安堂くんがそういうことをせずに、3年も付き合ったとは思えない。

甘えん坊だし。

も一度言うけど、エロだし。

……やっぱり先生とは、そーゆーこと……。


「……………、」


(…違う、違う。もうそれは過去なんだってば)


顔の前で、思考を拭うように手を振った。

安堂くんは言ってくれた。

あたしだけだって。

だからあたしが気にしちゃいけない。

ダメ!

弱い自分に負けるな!

自分に言い聞かせて、拳を握った。


その時、5時間目の先生が教室に入ってきた。


「えー!美坂先生どうしたのー?」


――ピシ。

その姿に、あたしの動きが止まった。