真っ直ぐには安堂くんの顔が見られなくて、赤らんだ顔でその腕にしがみついていた。

すると、ちゅ、と頬にキス。

そのキスが優しくて、赤い顔のまま、安堂くんを見上げた。

すると安堂くんは、真っ直ぐにあたしを見つめて立っていた。


「……どこにも、行かないで」


その瞳があまりに真っ直ぐで、あたしはますます真っ赤になった。

そ、それはあたしのセリフで…!


「ど、どこにも行かないよっ!それに、あたしは、行くとこなんて…っ」


グルグルと瞳が回る。


「い、行くとしたら、安堂くんの方でしょ…!? 安堂くん、モテまくり、なんだし…っ」

「俺はどこにも行かないよ」


そう言って、あたしの額にキスをする。


「俺には小林しかいないから。小林だけだよ」

「―――――…っ」


安堂くんは気付いていたのかな?

気付いてくれていたのかな?

あたしが不安を感じていたこと。

不安に思ったこと。

だからわざわざ追い掛けて、ここまで来てくれたのかな?

あんなこと、言ってくれたのかな?


「…………っ」


そう思うと、胸がいっぱいになって苦しくなった。


「小林…!?」


ぽろぽろと泣き出したあたしに、安堂くんが驚く。


「……これは、嬉し涙だよ。あたし、今、すっごく嬉しいの」


泣きながら、笑った。

笑顔の裏側に、涙を隠している人、きっと多いだろうと彼は言う。

でもその逆に、涙の裏側に笑顔を持っている人もきっとたくさん、いるよね?

あたし達は大丈夫だよね?


今を、これからを、

二人で歩いていく。


あたしだったら絶対に、裏で泣かせたりしないから。

その誓いをこめて、あたしはもう一度、大きく笑った。

そんなあたしに安堂くんももう一度。

優しいキスを落としてくれた。

確信した。

確信していた。


あたしたちは何があっても壊れたりしないと、

祈りに似た願いを、心の奥で確信していた――――。