「安堂…くん…?」


名前を呼ぶとますますその力は強くなった。

ギュッ、と抱きしめられると同時に、首筋に吐息を感じた。

触れる。

安堂くんの唇が触れる。


「あああ安堂くん…!?!?」


あたしはジタバタと焦って手を振った。

それでも安堂くんはお構いなし。

唇は今でも首筋に触れている。


「……俺のって痕つけていい?」


安堂くんが低く、小さく、でも確実にそう言った。

その言葉に体の芯から熱くなった。


「だ、ダメ…っ」

「ダメじゃない」

「―――っ」


その瞬間、ちくりと痛みが伴う。

首筋に、幸せな痛み。

ギュッと目をつむっていると、今度はキスが落ちてきた。

触れるだけのキス。

驚いて目を見開くと、今度は少しだけ深いキス。

その勢いに押されて、あたしは後ずさりした。

すぐさま壁にぶつかって、逃げ場を失う。

安堂くんはそれでも逃がしてはくれなかった。

まるで窓の外の雨みたいに、キスの嵐が降ってくる。

逃げようとすると、顎を押さえられて、逃げ場を失う。

…もう立っていられない。

安堂くんの制服を、ギュッと掴むと、安堂くんが言った。


「……舌、入れていい?」

「―――!」


その言葉に真っ赤になった顔を持ち上げる。

あたしはふるふると頭を振りながら、消え入りそうな声で答えた。


「だ、だめ……」


―――――!

だめ、と言ったのに、安堂くんはそれを無視した。

分け入れられた舌先が、優しく絡む。

息が出来ない。

立って、いられない。

全てが溶けちゃいそうなくらい、全てがどうでもよくなっちゃいそうなくらい。

甘い痺れが全身を貫く。

力の入らなくなったあたしに気付いてか、安堂くんが唇を離した。