あの後、ナッチたちに見つかって、あたしはお好み焼き作りに強制送還させられた。
そして、今。
親友に胸倉を掴まれている。
「……一発殴らせろ」
「な、なんて物騒なことを…」
「それくらいしたってバチは当たらないわよ!くぅっ!安堂くんがいるって聞いたから気合い入れて行ったのにぃ~~!!!」
ナッチは俯せて、テーブルをダンダンと叩いている。
確かに、今日はいつもの3倍くらい気合いの入ったメイクをしていた。
「なのに安堂くんはいなくて、知枝里と二人で歩いてて…」
ジトッとこちらを見ている。
「チューしたの!? チューしたんでしょ!? 正直に言いなさいよ!何回したのよ!!」
胸倉を掴まれてグラグラと揺らされた。
「そ、そんなの……」
してない。
あの後、安堂くんのことが真っ直ぐに見られなくなった。
何を話していいか分からなくなった。
だって安堂くんはこう言った。
『サクラダ“も”辛い恋してたのかな』
だけどそんなこと、分かりきっていたことだ。
安堂くんは先生のことが好きだった。
あたしの、女の子の、肩を借りて泣いちゃうくらい、辛い思いをしていた。
でも、過去のことだ。
もう過去のこと。
だけど、それでも嫌なんだ。
安堂くんと先生の過去にすら、嫉妬する。
知らないから、想像ばかりが膨らんで。
だからって知る勇気もなくて。
真っ直ぐにどこか遠くを見つめていた、あの瞳にどんな思い出が映っているのか、あたしは知らない。
「…あ、あたし、ゴミ捨ててくるっ。この雨だし、みんな行きたくないでしょ」
「……え、知枝里…!?」
「じゃっ、行ってくるね!」
ナッチの返事は待たずに、袋を掴んで駆け出した。
もう少しで涙が、零れてしまいそうだった。

