曲が終わった時、言葉にならない静寂が武道館の中を包み込んでいた。
きっと、思ったことはみんな一緒だ。
張り裂けそうなくらい胸が苦しくなって、
人を好きになるってどういうことかって、分かって。
聞いていた女の子たちの洟(はな)をすする音が、武道館の中に響いた。
それはもちろん、あたしも例外ではなくて――…。
「……行こう」
そう言って、安堂くんがあたしの手を引いた。
無言のまま、あたし達は武道館を後にした。
外に出ると、降り出しそうだった雨が、ぽつりぽつりと空から舞い降りていた。
まるで、あたしの瞳から零れる涙みたいに、ぽつりぽつりと、静かに地上に降りてきていた。
たった数分のことだったはずなのに、暗かったあの部屋から出ると、時間がスリップしてしまったかのような感覚に襲われた。
「……何か、意外、だった」
洟をすすり、あたしはぽつりと安堂くんに言った。
「桜田くんってさ、クラスでも超~~~、それはも~~~、おちゃらけててさ。授業はさぼりの常連だし、景山先生からも目をつけられててさ!
……なのに、あんな曲歌うんだもん。なんか、切なくなっちゃった…」
繋いでいた手を、ギュッと握りしめた。
すると、安堂くんも小さく手を握り返してくれた。
そして真っ直ぐに前を向いたまま、安堂くんは言った。
「………人のホントのとこなんて、上辺だけじゃ分かんないよ。顔では笑ってても、心の中で泣いてる人って、…すごく多いと思う」
その言葉を、あたしはどう受け止めていいのか分からなかった。
それは、いったい誰の話?
「きっとサクラダも辛い恋、してたんだろーね。もしかしたら今も、かな?」
安堂くんはそう言って、ふいに顔を上げた。
「あ、雨、強くなってきた」
あたしは何も言えないまま、ただ安堂くんと一緒に空を見上げた。
ぽつりぽつりと降っていた雨が、一瞬で土砂降りに変わっていった。

