あたしの態度のせいだろうか、先生はこちらを窺いながらも少し困った顔をしていた。
でも、何も。
特に何も、話すこと、ない。
印刷機を見つめて、早く終わらないかとそれだけを思っていた。
「そういえば、さ」
そんなあたしに、先生が声をかけてきた。
小さく顔を向ける。
「小林さん、彼氏できたんだね?」
その言葉に、動きが止まった。
「え……、」
「職員室でもねー?凄い噂で。あの安堂くんを捕まえたって、結構小林さん有名人」
先生は肩をすくめて、さっきと変わらぬ笑顔で言った。
その笑顔は、何も知らない人が見れば、一生徒の色恋沙汰として見ている顔だ。
でも…。
あたしは知っている。
先生は安堂くんの元恋人。
そして今も、安堂くんは先生の好きな人――…。
「彼、誰にも靡かないんだって女の子たちに聞いてたのに、凄いね」
このこの、とあたしを腕で軽く突いた。
先生はもう、安堂くんのこと、何とも思ってないの…?
あのチョコも、単なる思い出で、本当にただの思い出で、ふいに思い出しただけなの…?
先生の、大人の笑顔の意味が分からなくて、本当の心が見えなくて、戸惑った。
先生は今もまだ、安堂くんのことが好きなの?
―――それとももう、嫌いなの?
「……安堂くんの方から、言ってくれました…」
視線は落として、うるさい心臓を押さえて、答えた。
これはズルいことになる?
先生の気持ち、もしかしたら知ってるかもしれないのに、これは、卑怯なことになる―――?

