「ねぇ、知枝里。安堂くんが悲惨なお弁当、食べてる」

「…………。」


教室に帰ると、安堂くんが手作り弁当を食べているということが話題になっていた。

しかもその弁当の中身が、あまりに、ヒドイ、と。


「誰から受け取ったんだろ~!? 安堂くん、そういうの受け取んないって有名だったのにね~!?」


女子には平等に冷たい安堂くんが、学校一の美人教師と呼ばれている美坂先生と付き合っていた。

その美坂先生にフラれた現場を、いたいけな子羊Tに目撃されてしまった。

そこで狼Aは、小羊Tを家来にすることにした。

その小羊Tは、全ては彼氏が出来た時の為に、と力を温存していた。

初めての彼氏に捧げるつもり、だったのに!!


「好きな人に渡す弁当ならもっと練習してからあげろって話よね」

「……好きな人じゃ、ないんじゃない?」

「え?何?」

「あっ、いや、その!安堂くん、もしかして自分で作って来たんじゃない!? お母さんが寝坊したとかで!」

「知枝里、知らないの?安堂くん、お母さん、いないんだよ?」

「え……、」


その事実に少しだけ、言葉が鈍る。