しかし。
(桜田くんのばかぁぁぁぁ~~~~!!!)
景山先生にコピーを頼まれて、あたしは一人、印刷室の中にいた。
来ないだろうとは思っていたけど、まさか本当に来ないとは。
なのに景山先生はそれは想定内だったようで、あたしにだけ雑務を言いつけた。
(週番って雑用係りじゃないんですけどぉぉ…)
怒りながら、ボタンを押す。
ガタンガタン、と印刷機が稼働し始める。
ふいに、コピー紙の積み上げられた箱たちの向こう、カーテンの隙間から外が見えた。
桜の木。
そろそろ葉桜になろうとしている。
満開が終わってしまうと、寂しい気持ちになる。
また一年、あのピンク色と会えなくなる。
でも今年はサクラが咲いたから。
胸のうちポケットに、ピンク色のお守りがあるから、寂しくない。
ふんふんふん、と鼻歌混じりに雑務をしていると、印刷室のドアが開いた。
「ちょっと、遅いよ!桜田くんっ! あっ…」
桜田くんしか入ってこないだろうと思っていたあたしは、その姿を確認して息を呑む。
入ってきたその人は……、
「美坂先生…」
「あら?奇遇ね。また会うなんて」
にこにこと笑い、今日もいつものように後ろで髪を一つに束ねていた。
背中までかかる長い髪。
ゆるくかかったパーマがとても大人っぽい。
「今日も景山先生に…、ヘマ?」
先生はいたずらっぽく笑って、あたしに言った。
一つ一つの表情が、そんなおどけた表情さえも綺麗で、あたしはさっと視線を逸らした。
「きょ…、今日は週番で…」
「あ、そうだったの?ごめんね、失礼なこと言っちゃった」
「いえ…」
俯いたまま、頭を振った。
突然息苦しく、なった気がした。

