次の日。
いつものように屋上で、あたしは安堂くんとお弁当を食べていた。
「…ってわけで今週週番なの…。絶対景山先生にコキ使われるの…」
景山先生が苦手なあたしにとって、この1週間は地獄だ。
それに週番の相手が桜田くんじゃ一人で仕事をするも同然だ。
「……サクラダ、ってだれ?」
「…へ?」
シクシクとうなだれていると、安堂くんがそんなことを口にした。
「し、知らない…?」
あんなに騒がれてたのに、あんなに金髪で目立つのに、知らない、…だと!?
安堂くんはコクッと頷く。
「今年来た転入生で、金髪でド派手な奴で、サボり魔で、それで…っ」
それで、バイトの時の……。
あ、だからあその時“知らない男”って言ったのか?
もしかして安堂くん、桜田くんのこと知らなかったのかな!?
「それで?」
言葉を止めたあたしに、安堂くんの視線が向いた。
「あっ、それで、あの……」
バイトのこと、掘り返しちゃうと怒るかな。
誕生日の時のことを思い出しただけでキュンとする。
キュンっと鳴った胸を押さえて、あたしは安堂くんを見た。
「……あの、ほら。バイトの時の…あの人」
ちょっと遠慮がちに伝えた。
「…………、」
前みたいにヤキモチを妬いてくれるかなってちょっと期待して、ちらっと安堂くんを見たが、安堂くんは平然とした顔でお弁当を食べていた。
ただ一言、「ふーん」と鼻を鳴らしただけ。
いつものごとく無表情。
ションとして、安堂くんに言った。
「だからお昼休みも早めに行かないといけないの」
せっかくの二人きりの時間なのに、景山先生が雑用を頼んできた。
お弁当を食べたらすぐに来い!って怖い顔をして言うから、行かないわけにはいかない。
そそくさとお弁当を片付けて、立ち上がろうとした。
「―――!」
そこで安堂くんに腕を引かれ、体勢を崩した。
ちょん、と触れた唇。
「……変なことされないでよ。…できればあんまり話とかも…」
少しだけふて腐れた顔が、あたしに訴えかけている。
あたしはただそれだけで笑顔になって、大きく頷いた。
週番でも雑用でも、今なら何でも、やってやれる気がした。

