ピーチの香りのリップ。

桜の花びら柄のシュシュ。

とびっきり甘いお菓子に。

キミと繋がる赤い携帯。

そして、ちょっぴり膨らんだピンク色のお守り…。

全部あたしの必需品。

大事な大事な宝物。


「ふふふふふ」


お守りの中、こっそり入れたあるものを見て、あたしはニマニマと笑った。

お守りの袋に一緒に入れてるのは、1つはボタン。

大好きなあの人から貰ったブレザーのボタン。

そしてもう1つは、彼にプレゼントしたシルバーのピアス。

1つは彼の耳元に、1つはこの袋の中に。

ペアを二人で分けるっていい気分。

どこにいても、いつでも、繋がってるって感じられる。

辛いことも耐えられる。



「あれが安堂くんの……」

「えっ、あんなのが!?」


人の噂は75日。

未だその日数には達しておらず、廊下を歩く度に後ろ指を指されていた。


(あんなの、って……)


どうやらこのことをバラした(?)のは、安堂くん本人だったらしく、そのあと紡がれた想いの熱さにあたしは胸を打たれた。


(バラしたっていうより告白されて、誰か好きな人でもいるのかって聞かれた時に答えただけ、らしいけど…)


……彼女がいる、って。

それがあたしだ、って。

その言葉を思い出し、あたしは再びヘラッと笑った。

彼は彼氏にしたい男No.1。

そんな彼と、あたしみたいなちんちくりんな女がくっついたとなると文句を言いたくなって当たり前だと思う。


「小林」

「安堂くん!」


でもそのお陰で、今は廊下でもどこでも人前で話が出来るようになっていた。

このためなら、後ろ指を指されるくらいお安いご用だ!