「……ごめんね」


なにの、ごめん?

安堂くんは何も悪くないよ。その気持ち、嬉しいよ。

胸が熱くなるくらい。胸が、痛くなるくらい。

ぎゅっと抱きしめあって、あたし達は座っていた。

そしてしばらくして、安堂くんが口を開く。


「このピアス、小林がつけてよ」


ひっく、と喉を鳴らしながら、安堂くんの耳にかかった髪をそっと払った。


「……痛く、ない?」

「…痛い」

「ご、ごめ…っ」

「ウソ。いたくない。早くつけて」


安堂くんはふっと笑って、あたしを見上げる。

その瞳に見つめられて、ドキドキしながら、その耳に四角いピアスをはめた。


「……大切にする」


安堂くんが優しい瞳で言ってくれたから、また涙が込み上げてきた。


「ぴ、ピアスってね…?いつも耳元で愛を囁いています、って意味があるんだって…っ」


涙とか他のいろんな気持ちとかで、ちょっと言葉が大袈裟になった。

だけどそれを、安堂くんは優しい笑顔で聞いてくれた。

それからしばらくして、安堂くんは赤く目の腫れたあたしの顔を笑った。

二人で大きなケーキにろうそくを立てて、一気に火を吹き消した。

不器用で、泣き虫で、寂しがりやなあたし達だけど。

このまま永遠に、この恋が続いていけばいいって思った。

続いていきますように、と願っていた。

そうだ、今度はカメラを持ってこよう。

二人の写真でいっぱいになるように。

思い返して二人で、思い出を辿れるように。

18歳になった安堂くんと、二人で一緒に泣いて笑った。

きっと一生忘れない。


「もう結婚できる年か」


と、言った安堂くんに、あたしが耳まで真っ赤になったのは、言うまでもなかった。