「……ピアス…」

「そー!丸か四角かってのはこのことだったんだよー!…で、もうバレてるから言うけどね、簡単なバイトして、買ったんだ。結構ちゃんとしたやつで…」

「知ってたよ」

「え…?」


安堂くんの言葉に、驚いて顔をあげた。


「バイトしてるの、知ってた。街中でへんなかぶり物かぶってた」

「……っ!!」


安堂くんには絶対知られなくなかった。


「あ、あれは…っ」

「それに、知らない男と仲良さそうにしてた」


……え?

その言葉に、ゆっくりと視線を上げた。


「あ、あれはー…クラスメートで…」

「だからこれは受け取れない」

「……!」


はっきりと、そう言われて、あたしは目を見開いた。

目の前に、ピアスの入った箱が突き返されている。

ゆらゆらと、箱から視線を上げると、安堂くんはまっすぐにあたしを見据えていた。

凛としたその顔は、怖いくらい綺麗で、まるで本物の人形みたいだった。


「い…らない…?気に、入らなかった…?」

「……、」

「ごめん…、あたし、好みとか知らなくて…」


必死に笑顔を繕って、震えている唇を押し殺した。

似合うだろうと思って選んだ。

つけて貰えたら嬉しいなって思って選んだ。

でも……。

あたしの好みじゃダメだった…?


「…そういうことじゃない。俺が欲しいのはもっと別の何かだよ」


言葉の意味が分からずに、安堂くんへと視線を上げた。


「……どういう……?」


訊ねるあたしに、安堂くんは視線を逸らす。

その顔は迷惑そうに歪んでいた。


「……小林と付き合ってるって、言ったの、俺だよ」

「え…!?」


突然のカミングアウトに思わず声が出た。


「なん、なんで…っ!? あたし、そのせいで、散々な目に…っ」

「遭えばいいって思った。友だちも何もかも、なくなればいーって…、俺だけでいーって……、
 って。俺、何言ってんだろ」


安堂くんはくしゃっと髪を掻いた。


「…ごめん。今のうそだよ。今のは忘れて…。それに、このプレゼントも、貰うから」


安堂くんが箱へと手を伸ばす。