「何で、鍵、開いてるの!?」


あたしの質問に、安堂くんは人差し指を差し出した。

綺麗な、でも男の人らしい指先に丸い金具が掛かっている。


「え……鍵…!?」

「そ、鍵。なくて開くわけないじゃん。じゃ弁当も貰ったし、閉めるからもう出て?」

「…へ…!?、あっ、いつの間に!」

「さっきの間(ま)に。小林って本当に鈍臭いんだな」

「ど、鈍臭い!?」

「ここに閉め出されたら、今度は家出騒動くらいじゃ済まないかもね」

「……っ」


昨日から、所々に刺がある。

お弁当だけ受け取ると、安堂くんは屋上の扉に鍵をかけ、スタスタと階段を降りて行った。

後ろ姿だけでも、腹が立つほどカッコイイ。

揺れる、柔らかそうな髪。片方にだけ光るピアス。

頭はいいくせに、どこか悪ガキな印象で、いつもどこか無表情。

あまり瞳に感情が出ない人。

なんて言うと、何故かみんなに怒られるから言わないけど。

せっかくカッコイイ顔をしてるんだから、もっと笑えばいーのにって思ってしまう。

………昨日から、頭の中が安堂くんのことばっかりだ。

それも仕方ない。こんなことになったのだから。

突然のアクシデント。半分以上、自分で撒いた種みたいなもの。