次の日。
[受け渡し場所は屋上]
昨日、不可抗力で交換することになったメールアドレス。
これは、ずばり、学年中の女子が知りたくて知りたくて、仕方ない情報だ。
こんな形で知る羽目にならなければ、今頃もっと幸せだったに違いない。
手の届かない相手との特別な関係に、ちょっと優越感を感じちゃったり…という、ね?
でも、今のあたしにはそんな感情は皆無だった。
(なんで、屋上?)
メールでも訊ねたけれど、[来たらわかるよ]って返事が来ただけで、答えにはなっていなかった。
だって、屋上って言ったら、普段は立ち入り禁止になっていて、鍵は開いていないはずだ。
屋上に続く階段も、入学した時の学校探検時に近くの廊下から見上げただけだった。
立ち入り禁止であることはみんな知っていて、だからこそみんなの記憶から屋上というものは消えている。
そんな屋上の扉の前に、お弁当を抱えて立っていた。近くに安堂くんの姿はなく、歩いてくる気配もない。
騙されたのか…!? と不安を感じていると、再び携帯が震えた。
[屋上に出てきて]
その文面に首を傾げる。いったい、どういうことだ。
そう思いながらもドアノブを捻ってみた。
「……!」
(開いてる…!?)
目を見張った瞬間、開いたドアから冷たい風が入ってきて、咄嗟に目を細めた。
お昼時の、まばゆい光の中に、はためく秋風。そして、その中に、一つ伸びる人影。