ふとそんな言葉が落ちてきて、あたしは顔を上げた。

その時、グッと圧力のかかった体。

胸倉を思い切り引っ張られている。

細い腕のどこにそんな力があるのか、簡単に安堂くんへと引き寄せられていた。

唇が、その、吐息が…っ。


(触れ合いそうな、距離……っ)


――カシャ。


そんな予想外の触れ合いが、シャッター音と共に離れた。

ただ、強烈に鼻腔を掠めた彼の香りがあたしの脳内に焼き付いた。


「へ……?」


疑問符を投げ掛ける。

それでも平然と、安堂くんは携帯を握っていた。


「こういうのを証拠って言うんだよ」


にこりと笑って、画面をあたしに見せ付けた。


「――ゲッ!」


そこには、突然のことに驚いて目を見開くあたしと、彫刻のように綺麗な横顔でまぶたを落とす安堂くん。

二人の接点は、唇。……のように見える、写真だった。

明らかにキスしているようにしか見えない写真が収められている。