「むむむむ無理だよっ」

「分かんないよ~?あたしイケると思う。だって安堂くん、あたしを振るときになんて言ったと思う?」

「……な、何て…言ったの?」


聞いていいんだろうか。

今までずっとナッチがこの話をしようとするのを、あたしは拒んでいた。

その話を聞いた時、自分がどんな気持ちを抱くのか、ナッチと一緒に悲しめるのか、ずっと不安だったから。


「お。ようやく聞く気になった?」


ナッチがあたしの耳元でいたずらっぽく笑った。


「あれはあたしがお弁当渡そうとした時―――、」






『悪いけど……受け取れない』

『……え、でも…っ』

『そういうの、好きな人からしか、受け取れない。チョコも、弁当も、…そういう気持ちも』







「キャーーーーーーーッ!!!!」

「……ッ!!!」


聞き入っていたあたしの耳元で、ナッチの爆音。

キーンとつんざす耳をどうにか押さえて、ナッチを見た。


「もうもう、最高じゃない!? あたしはやっぱりこの人、好きだなぁーって思ったわけよ! …あっ、うそ違うよ。好きでよかったってこと!いや、今もフツーに好きだけどさ。ばっ…、違うって!理想として好きなの! ―――って、ちがくて!知枝里のお弁当は食べてくれてんでしょ!?」

「……!」

「それが二人の秘密でしょ?」


ちょこんと鼻を弾かれて面食らった。

ドキドキと、鼓動はうるさかった。