ざわめきの消えた校内。
遠くから、先生たちの声だけが聞こえてくる。
そんな静寂の中、屋上に続く階段を二人で上がっていた。
手のひらは繋がったまま。
自分の心臓の音が、やけに大きい。
冷静になればなるほど、顔が熱くなるのが分かって、あたしの手を引いて少し前を歩く安堂くんが振り返りませんように、と祈った。
恋は落ちるもの。
その心は加速して、一気に斜面を転がり落ちていく。
その加速度と比例して、気持ちはますます膨らんで………。
気持ちに気付いてしまったその後は、どうすればいいんだろう。
どんな顔して向き合えばいいんだろう。
今までどんな顔して向き合ってきたんだろう。
屋上の扉を潜る頃には、手と足が一緒に出ていた。
「……ロボットダンス?」
安堂くんは冷ややかに、そしていつも通りに指摘した。
あたしは反射的に顔を上げた。
その綺麗な顔と向き合うと、不可抗力で頬が赤くなるのが分かった。
そして、加速する。
一気に全身が熱くなって、パクパクと唇を動かすことしか出来なかった。
「………、なに?」
安堂くんが怪訝そうな顔をしている。
でも頭を振ることしか出来なくて、ついには顔を見ていられなくなって、咄嗟に俯いた。
意識しちゃったら、急に言葉が出なくなっちゃったよ。
好きってこういうことなの?
見てるだけで苦しい。
そこにいるって分かっただけで、心臓が高鳴る。
その瞳に映っていると思うと、顔なんて上げられないよ。
真っ直ぐになんて見れないよ。
でも、知りたい。
恋って不思議。
“好き”って不思議。