2時間目の休み時間。

隣のクラスに行く、安堂くんの姿を見掛けた。

隣のクラスは大混乱で、女子の高い悲鳴が聞こえてきた。

すぐさまナッチから、昼休み会うことになったとハートのデコ尽くしのメールが届いた。

そして昼休み。

いつものように教室を出ていく安堂くんの姿を見たら、

何故か涙が浮かんできた。

この涙の意味は、なんなんだろう。

どうして、そんな二人を見たら、泣き出したくなったんだろう。


「小林さん、小林さん」


廊下から呼ばれた名前に、ゴシゴシと涙を拭いた。

それは安川くんだった。


「ちょっとちょっと」


手招きをして、あたしを呼んでいる。


「渡り廊下行かない?あそこ人少ないし」


渡り廊下につくと、安川くんは手すりに手をかけ、顔だけをこちらに向けて笑った。


「そろそろ、小林さんの返事、聞かせてもらえないかなーって。この2週間で、結構お互い知れたと思わない?結構仲良くなったし」


ピンと来なかった。

確かにたくさん、安川くんと話をした。

でも全然覚えていない。

安川くんの言葉とか、笑顔とか、仕草とか。

思い出そうとして、浮かんでくるのは……。

なぜか…安堂くんばっかりで。


「小林さん!?」


ぽろり、と涙の零れたあたしに安川くんが慌てた。

考えるだけで苦しくなって、思い出すだけで涙が出るのは、安堂くん、しかいない。


「ど、どうしたの…!?」


あたしはバカで、お子様だから、ここまで来なきゃ分からなかった。


「ご、ご、ごめ…っ、安川くん…!あたし、安川くんとは付き合えない…っ」


ここまで来なきゃ、分からないなんて。