安堂くんは噂話なんて興味ないって人だから、安堂くんには知られていないと思っていた。

告白されたってことまで、知ってるのかな…!?

あたしはどうすればいいのか、聞いてもいいのかな…?

なべっちやナッチは、付き合ってから始まる恋もあるという。

安堂くんは…?

安堂くんはどう思う…?


「…付き合う気でいるんだ…?」

「ま、まだ、だよ!まだそんな…っ」

「“まだ”って。あるんじゃん。付き合う気」

「―――っ」


安堂くんの言葉に恥ずかしくなって、頬を染めた。

きっと安堂くんなら、“答え”を教えてくれるかもしれない。


「そ、それでね…。実は安堂くんに相談があって…」


指先で遊びながら、安堂くんを窺った。


「あ、あのさ……恋ってさ、好きって気持ちってさ、付き合ってからでも…」

「分かったよ」


話の途中で口を挟んだ安堂くんに、ぱちくりとまばたきをした。


「へ……」


恋の経験者は、最後まで聞かなくても分かるのか!


「え、じゃあ…」


数週間悩んでいたことに蹴りがつけられると、あたしは笑顔で安堂くんを見つめた。


「有野のこと、紹介してよ」

「え…、」

「そのつもりで話してたんだろ?毎日毎日、そのつもりで」

「え…?」


突然、話がすり変わって、理解が追い付かない。


「ちょっと待って…、どういう…!?」


なんで突然、ナッチの話!?


「傷心は新しい恋でしか癒せないんだろ?そのために小林は“ア”リノを紹介して…。…だから俺は……」


一度そこで言葉を切り、伏せた瞳のまま安堂くんは笑った。


「だから俺は、小林といたって傷は癒えないんだ」


安堂くんが顔を上げた瞬間、世界が、ぐにゃりと曲がった気がした。