「ねぇ、安堂くん。安堂くんはまだ、……先生のこと、好き?」


昼休み、お弁当を食べながら、覚悟を決めて安堂くんに聞いた。

昨日の影響かまだ雲が多くて、晴れたり曇ったり。

だからいつもよりちょっと寒い。


「……またそんなこと…」

「大切なことなの!」


小さく顔を歪めた安堂くんを無視して、真正面から見据える。

そんなあたしに怪訝そうな顔をして、安堂くんは答えた。


「…………べつに。」

「別に!? もう気にしてないってこと!?」

「さぁ。知んない」

「知んない!? 自分のことなのに!?」


ヒステリックに叫ぶと、安堂くんがますます眉を寄せる。


「なんなの?いったい。しかも突然」


あたしはお箸を置いて、偉そうに人差し指を立てた。


「恋で傷ついた心を癒せるのはね、新しい恋しかないんだよ」


あたかも自分の言葉であるかのように、凄みをつけて言ってやった。

それでも安堂くんは「ふーん」と興味なさげな顔をしている。


「ちょっと聞いてる!?」

「聞いてる。声でかいから、嫌でも聞こえる。…で?俺に新しい恋でもしろって?」


お箸を咥えて、安堂くんが呆れた瞳を向けた。


「その通りっ!」


立てていた人差し指をますます反らして、安堂くんの顔に近付けた。


「安堂少年よ、恋心を抱くのだ!」


こんな素ん晴らしい提案を、安堂くんは胡散臭そ~うに聞いていた。


「で、相手は?」

「相手は、そうね。例えば、あ…っ」

「…あ?」


そこまで言ってフリーズする。

あたしは今、何て言おうとした!?


「“あ”って誰」

「が、学年の“あ”から順番に考えるのよっ」

「は?」