…二人、一緒に。


「あ、あた…っ」

「もしかして相合い傘も初めて?」


その凛とした瞳に冷たく見透かされて、頬が燃え盛るように熱くなった。

2月、冷たい雨が吹き荒れているというのに、あたしの体は熱みを帯びる。


「…何で今日、屋上に来なかった?」


安堂くんが、射抜くような強い瞳であたしを見据えた。

あまりにその瞳が強すぎて、目が逸らせなかった。


「ご、ごめ…」

「謝ってもダメだよ。俺は屋上で…待ってたのに」


その言葉に、耳を疑う。

待ってた…? あたしを……?

言葉なくして見上げるあたしに、安堂くんは視線を落とした。


「…なんで?なんで突然あんなチョコ渡すの?なんで小林が、先生に、渡せ、なんて…言う…っ」


目の前の安堂くんはいつもの安堂くんじゃなかった。

ギュッと眉を寄せて、今まで見せたことのない感情を表に出している。

風はますます強くなって、この大きな傘も意味がなくなっていた。

足や制服だけじゃなく、顔にまで雨の滴が飛んでいる。


「俺、ワガママ言いすぎた…?調子乗りすぎた…?キス…とかしたから…、小林は怒って…」


さっきの強い瞳は、俯かれてもう見えない。

ただ、消えてしまいそうな弱々しい声が、それでも大雨の中、あたしに届いた。


「ど…っ、どういうこと!? 怒る…?? あたしが…っ!?」


意味が分からなくて、安堂くんの前で手をばたつかせた。


「だから俺のこと、遠ざけようとしてんの?」


真っ直ぐに顔を上げた安堂くんは、泣いているのか怒っているのか分からない瞳で、あたしを見つめていた。


「ちっ、違うよっ…!? 何言って…っ、ああ!顔も制服もびしょびしょだよ…っ」


その瞳から逃れるように、あたしは話を逸らそうとした。

安堂くんが怒っている。

…怒ってる?

それとも、泣いてる?

ただ、あたしがしたことで、安堂くんを困らせてる。

話を逸らすあたしの手首を、安堂くんが掴んだ。


「ちゃんと、答えてよ」