蒼兄ちゃんと入れ替わるように、
友くんが点滴パックをもってきた。


友くんが医者の顔してる。


こうゆう時にイヤイヤをすると
友くんはブチキレる。


友「点滴始めるぞ」


とりあえず
聞こえないふりをしてみる。


友「右腕と左腕どっちにする? 右?左?」


友くんの声が
だんだん大きくなっていく。


まりあ「こっちがいい」


仕方なく左腕を差し出す。


友「よし。この留置針を埋め込んでおけば
何度も針をささなくて済むから。
痛いのは、今、一回だけ。
この一回だけは痛いけど」


まりあ「やっぱり痛いんじゃん。
点滴イヤ!」


友「はいはい」


体育会系の友くんに腕を掴まれたら、
抵抗出来ない。


友「ここに打つよ。チクッとするから」


アルコール消毒綿がヒヤッとする。


まりあ「怖いよぉ」


友「目をつぶってな。見てなくていいから」


グスングスングスン。


友「よし終わり。大成功」


ぎゅっと閉じていた目をあけてみた。


本当に針が埋め込まれている。



まりあ「友くん、すごいね。
友くん天才ドクターだよ。
テレビに出れるよ」


友「何言ってんだか。
医者なら全員できる事だ」


そうなんだ。


でも蒼兄ちゃんも友くんも、
あたしの中では
世界一のスーパードクターだよ。






友「点滴の薬が入っていくと
熱が下がって楽になっていくからな。
まりあ、俺のことちゃんと見て。
目を合わせて」


まりあ「うん」


友「せっかく針入れたんだから、
自分で抜くなよ。
抜いてもまた入れるからな。
何度も痛いのはイヤだろう。
だから点滴勝手に抜かないって
約束できるか?」



友くんが、私の目を見つめたまま
グッと顔を近づけてきた。


キスする距離だってば。



友「約束できるよな?」


まりあ「うん」


友「まりあは約束が守れるよな?」


まりあ「守れるよ…」


友「よし。じゃあお兄ちゃんたちは
病院行く時間だから、 もう行くぞ」


まりあ「え、もう行っちゃうの?」


友「患者さん待たせてるんだから。
なんかあったら
このナースコールを押してくれたら
俺か兄貴のスマホに繋がるから。
あ、仕事中にくだらない用で押すなよ」


まりあ「わかってるよ」


友「じゃあ、お大事に」



友くんの言い方むかつく。



学校に行かれないなら、
朝寝坊できたのに。


蒼兄ちゃんもむかつく。



もぉ、やってらんない!