しかし、彼女は一体誰と話をしていたのだろうか。ここには見た感じ俺とゆきねしかいないのだが。
「さて、それでは人間さん」
一体誰がどこで喋っているのか。まさかゆきねが腹話術でも使っているんじゃないだろうな。
「あらあら、話をする時は相手を見なさいって教わらなかった?」
「いや、教わりましたけど、どこにいるのか、さっぱり見当がつかないんですけど」
「えっ? 気づいてなかったの? それはごめんなさい。こっちよ」
声がする方に首を捻っても何もいない。しいて言うなら、彼女の腰にぶら下がっている猫のぬいぐるみだけだが。
「ほらほら、ここよ」
声の方に近づくが、声は少女の腰の辺りから聞こえる。
「もう、本当に分からないの? ここよ!」
ついてにキレられてしまうが、ここと言われましても、どこにも人が見当たらないんですが。
「あなた、いい根性してるわね。それとも本当のおバカさん? ここだって言ってるでしょ!」
段々声に怒気が混じってきた。こりゃ、早いとこ探し出さないと、俺の身が心配になってきた。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいね。今見つけ出しますから」
「ふう、まあ、普通の人間には信じられないわね。しょうがない。現実を教えてあげるわ」
その声を同時に彼女の腰にぶら下がっていたぬいぐるみが揺れだし、綺麗な放物線を描いて地面に着地した。
「…………」
なんじゃ、こりゃ、ぬいぐるみが動いたぞ。
「これで信じられたでしょ。私はここよ」
「…………」
「これが現実なのよ。分かる? 私はここよ」
「…………」
「いい加減に理解しろやー!」
ぬいぐるみはありえないほど跳躍し、俺の顔面に蹴りを入れたじゃないか。
「痛っ、ぬっ、ぬいぐるみに襲われたー」
そりゃ、そうだろ、無機物の代表格であるぬいぐるみに襲われた日にゃあ、何がどうなったか意味がまったくわからん
「もう、疲れるからこれっきりにしてよね。いい? 私はここよ」
胸をはるようにそのぬいぐるみは俺の目の前に立っていた。
「まっ、マジですか?」
「そうそうマジマジ、大マジよ。まったく、しっかりしてよね。それより自己紹介がまだだったわよね。私はさくら、この子の使い魔なの」
「使い魔? 使い魔っていったらアニメとか漫画とかに良く出てくる、魔術師と契約したってやつですか?」
突然使い魔だといわれてもまったくもって意味がわからん。そんなのはファンタジーの世界だけだろ。
「そうそう、良くできました。私はこの子と契約して使い魔になったのよ。その詳細は教えられないけどね」
もう、どこからツッコンでいいかわからない。いきなり命を狙われるとか訳のわからん話になったと思ったら今度はぬいぐるみが喋って使い魔だと? 冗談も大概にしてくれ。
「いや、すみません。少し頭が混乱しているようです」
とりあえず、眉間を押さえて考えてみる。ええと、使い魔? なんじゃそりゃ。まったくもって意味がわからない。
「とりあえず、いいかしら」
しびれをきらしたさくらが俺の前に進み出た。
「これから話すことは、あなたみたいな一般人には到底信じられないかもしれない。でも真実だからしっかり聞きなさい」
しかし……猫に諭されているっていう構図はかなりシュールだな。
「いい、例えば、時間っていう概念はわかる?」
「はあ、時間っていったら連続していて、誰にも平等に流れるもんですよね」
「良く出来ました。そう、時間というのは、過去から未来へ向けて連続して続く世界共通の概念よね。学校ではそう教えるわ。だけど、その時間が一つじゃなかったら?」
「??」
この人(猫)は何を言っているんだ? 時間が一つじゃないなんて。
「例えば、あなたがコーヒーと紅茶のどちらかを買おうか悩んだとして、結局コーヒーを選んだとする。この時の時間軸はいくつでしょう」
「は? コーヒーを選んだのなら、その後にコーヒーを飲むっていう時間軸しかなから一つですよね」
「そうね。通常ならばそう考えるわよね。でも、もし、紅茶を飲んでいるという時間軸も存在するとしたらどうかしら。二つの世界が存在することになるわよね」
「いやいや、それは結果論であってコーヒーを飲んでいる世界から紅茶を飲んでいる世界なんてわからないですよね。であれば、時間軸はその一つだと思いますが」
「そうよね。確かに片方の時間軸からもう一つの時間軸は観測できないから、その世界が絶対だと思うわよね。でもね。実際はあなたが紅茶を飲んでいる世界も存在したとしたら、どうなると思う?」
「いや、まったく想像できないですけど」
「この世界の他に無数に世界があるってことになるわよね」
「はあ、確かにいくつも時間軸が存在するのであれば、たくさんの世界が存在するとは思いますが」
「私たちはそれを平衡世界と呼んでいるの」
「へいこう世界?」
「そう、今私達が生活している世界とその昔に枝分かれした『あるはずだった世界』まあ、一言で言ってしまえばパラレルワールドよね」
もう一つの世界があるなんて漫画や小説の世界だけだろ。どうなってんだ一体。
「でね。ここからが重要なのよ。よく聞なさい。この平衡世界なんだけど、何も世界中の全ての人間が迷った時に発生するわけじゃないの。そんな事だったら、とっくに無限大クラスの世界が存在することになるからね。じゃあ、どんな時に発生するか。答えは簡単。特定の人間によって発生するのよ」
「特定の人間?」
「そう、私達はその人物をニームと呼んでいるわ。インド神話における『最初の木』という意味ね。この現象を引き起こしている最初の人物ってことよ。そのニームを私とゆきねは探しているの」
「ということは、平衡世界だの何だって、誰か原因の人がいるということなんですか?」
「そうよ」
三文字で返答したのは、ゆきねだった。
「さて、それでは人間さん」
一体誰がどこで喋っているのか。まさかゆきねが腹話術でも使っているんじゃないだろうな。
「あらあら、話をする時は相手を見なさいって教わらなかった?」
「いや、教わりましたけど、どこにいるのか、さっぱり見当がつかないんですけど」
「えっ? 気づいてなかったの? それはごめんなさい。こっちよ」
声がする方に首を捻っても何もいない。しいて言うなら、彼女の腰にぶら下がっている猫のぬいぐるみだけだが。
「ほらほら、ここよ」
声の方に近づくが、声は少女の腰の辺りから聞こえる。
「もう、本当に分からないの? ここよ!」
ついてにキレられてしまうが、ここと言われましても、どこにも人が見当たらないんですが。
「あなた、いい根性してるわね。それとも本当のおバカさん? ここだって言ってるでしょ!」
段々声に怒気が混じってきた。こりゃ、早いとこ探し出さないと、俺の身が心配になってきた。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいね。今見つけ出しますから」
「ふう、まあ、普通の人間には信じられないわね。しょうがない。現実を教えてあげるわ」
その声を同時に彼女の腰にぶら下がっていたぬいぐるみが揺れだし、綺麗な放物線を描いて地面に着地した。
「…………」
なんじゃ、こりゃ、ぬいぐるみが動いたぞ。
「これで信じられたでしょ。私はここよ」
「…………」
「これが現実なのよ。分かる? 私はここよ」
「…………」
「いい加減に理解しろやー!」
ぬいぐるみはありえないほど跳躍し、俺の顔面に蹴りを入れたじゃないか。
「痛っ、ぬっ、ぬいぐるみに襲われたー」
そりゃ、そうだろ、無機物の代表格であるぬいぐるみに襲われた日にゃあ、何がどうなったか意味がまったくわからん
「もう、疲れるからこれっきりにしてよね。いい? 私はここよ」
胸をはるようにそのぬいぐるみは俺の目の前に立っていた。
「まっ、マジですか?」
「そうそうマジマジ、大マジよ。まったく、しっかりしてよね。それより自己紹介がまだだったわよね。私はさくら、この子の使い魔なの」
「使い魔? 使い魔っていったらアニメとか漫画とかに良く出てくる、魔術師と契約したってやつですか?」
突然使い魔だといわれてもまったくもって意味がわからん。そんなのはファンタジーの世界だけだろ。
「そうそう、良くできました。私はこの子と契約して使い魔になったのよ。その詳細は教えられないけどね」
もう、どこからツッコンでいいかわからない。いきなり命を狙われるとか訳のわからん話になったと思ったら今度はぬいぐるみが喋って使い魔だと? 冗談も大概にしてくれ。
「いや、すみません。少し頭が混乱しているようです」
とりあえず、眉間を押さえて考えてみる。ええと、使い魔? なんじゃそりゃ。まったくもって意味がわからない。
「とりあえず、いいかしら」
しびれをきらしたさくらが俺の前に進み出た。
「これから話すことは、あなたみたいな一般人には到底信じられないかもしれない。でも真実だからしっかり聞きなさい」
しかし……猫に諭されているっていう構図はかなりシュールだな。
「いい、例えば、時間っていう概念はわかる?」
「はあ、時間っていったら連続していて、誰にも平等に流れるもんですよね」
「良く出来ました。そう、時間というのは、過去から未来へ向けて連続して続く世界共通の概念よね。学校ではそう教えるわ。だけど、その時間が一つじゃなかったら?」
「??」
この人(猫)は何を言っているんだ? 時間が一つじゃないなんて。
「例えば、あなたがコーヒーと紅茶のどちらかを買おうか悩んだとして、結局コーヒーを選んだとする。この時の時間軸はいくつでしょう」
「は? コーヒーを選んだのなら、その後にコーヒーを飲むっていう時間軸しかなから一つですよね」
「そうね。通常ならばそう考えるわよね。でも、もし、紅茶を飲んでいるという時間軸も存在するとしたらどうかしら。二つの世界が存在することになるわよね」
「いやいや、それは結果論であってコーヒーを飲んでいる世界から紅茶を飲んでいる世界なんてわからないですよね。であれば、時間軸はその一つだと思いますが」
「そうよね。確かに片方の時間軸からもう一つの時間軸は観測できないから、その世界が絶対だと思うわよね。でもね。実際はあなたが紅茶を飲んでいる世界も存在したとしたら、どうなると思う?」
「いや、まったく想像できないですけど」
「この世界の他に無数に世界があるってことになるわよね」
「はあ、確かにいくつも時間軸が存在するのであれば、たくさんの世界が存在するとは思いますが」
「私たちはそれを平衡世界と呼んでいるの」
「へいこう世界?」
「そう、今私達が生活している世界とその昔に枝分かれした『あるはずだった世界』まあ、一言で言ってしまえばパラレルワールドよね」
もう一つの世界があるなんて漫画や小説の世界だけだろ。どうなってんだ一体。
「でね。ここからが重要なのよ。よく聞なさい。この平衡世界なんだけど、何も世界中の全ての人間が迷った時に発生するわけじゃないの。そんな事だったら、とっくに無限大クラスの世界が存在することになるからね。じゃあ、どんな時に発生するか。答えは簡単。特定の人間によって発生するのよ」
「特定の人間?」
「そう、私達はその人物をニームと呼んでいるわ。インド神話における『最初の木』という意味ね。この現象を引き起こしている最初の人物ってことよ。そのニームを私とゆきねは探しているの」
「ということは、平衡世界だの何だって、誰か原因の人がいるということなんですか?」
「そうよ」
三文字で返答したのは、ゆきねだった。

