遠くで聞き慣れた声がした気がして、意識がゆっくりと覚醒してくるけど、まだ目を開けたくなくてもう一度布団を被る。

と、同時にノックもなく部屋のドアが開けられ、無遠慮な足音が近付いてきて布団を剥ぎ取ってしまった。

「シュークリーム食うか?」

予想通りの声に、目を閉じたまま手探りで布団を探して被り直そうとしたけれど、布団を掴む前にその腕を取られ、上半身を引き起こされてしまった。
どうやら「食うか?」は「食え」という意味らしい。

中途半端に浅い眠りから起こされてシャキッとしない。
いつまでもグズグズしていたら、「プリンシュー」という言葉が聞こえたから「食べる」と答え、下半身を隠していた布団をめくる。

「・・・っ!おまっ、ばかっ、なんて格好・・・」

瞬間、ずっと横に立っていた拓真がくるりと後ろを向いた。
その後ろ姿を足から頭に向かって見上げれば、耳が赤く染まっている。

「格好・・・?」

拓真から自分へと目を移せば、スカートが膝上辺りまで捲れ上がっていた。
それだけ。
別に下着が見えているわけでもない。
足なんて、制服着てるときだって見えているだろうに。
だいたい、私を女だなんて思っていないくせに。

「な、直したか?ほら、行くぞ?」

こちらを振り向くことなく、拓真がドアへと手を伸ばす。
拓真の態度に納得がいかなくて、その背中に声を掛けた。スカートの裾を直さずに。

「ねぇ・・・なに、赤くなってんの?拓真って、私のこと女だって認識してたっけ?」

「は、はぁ?おまえはずっと女だろうがっ」

やっぱりドアに向かったままそれだけ吐き捨てると、乱暴な足音をさせながら、拓真が部屋を出て行った。

変なやつ。

私はベッドから降りると、ふらふらとリビングへと向かった。