最寄り駅に着いて、私は迷わず家と逆方向へ歩き出す。拓真も黙ってついてくる。
目的地は、100メートルも歩かない所にあるケーキ屋さん。ケンカの仲直りはここのシュークリームと決まっている。それも、普通のではなく、プリンシュー。シューの間には、生クリームと小振りのプリン。普通のより少し値段は張るけど、大好きなはーちゃんと気まずいままでいることを思えば安いものだ。

「…たっくんも食べる?」

付き合わせてしまっている拓真にも一応聞いてみる。
拓真を家に引き留める口実とも言うけど。
たっくんだって、はーちゃんに会いたいでしょ?なんて思いながら拓真を振り返ると、後ろに立っていたはずの拓真はいつの間にかショーケースの前で品定め中だった。

「オレ、塩大福。」

「やっぱりねー。」

昔ながらのこのお店は、洋菓子も和菓子も置いてあって、塩大福は拓真の好物。拓真さまへの袖の下はこれを選んでおけば間違いない、というくらい。

お店を後にして、私たちは家へと向かう。
華月は今日1日、一人で何をしていたんだろう?
常にべったりじゃないけれど、そばにいるはずの華月がいないのは寂しいし、心細い。
私は一人では何もできない、弱い人間だ。

はーちゃんは、私の半身なんだもん。