「たっくん!はーちゃんはどうしたのよ!?」

下駄箱から内履きを落としたところで、詩月のお叱りを受ける。
駅前まで来て帰っていった華月を呆然と見送ってしまったために、結局いつもの電車には間に合わず、遅刻ギリギリになったというのに、詩月は生徒玄関でオレを待ち受けていた。ご丁寧に仁王立ちで。

「知らねーよ。休むなんて言うから無理矢理引っ張り出したけど、駅前まで来て、勝手に怒って帰ってった。」

「はぁ?」

首をかしげた詩月の髪がはらりと揺れる。華月とは違う長くて真っ直ぐな黒髪。
見たまんまの報告をして、オレは教室に向かうべく詩月の横を通り抜ける。

「二人きりが気まずくてたっくんに頼ってるのに、どうして助けてくれないのよぅ!謝ろうと思ってたのにっ!」

…姉妹ケンカにオレを巻き込まないでくれ。階段をのぼりながらため息をつく。
今朝、まだ半分寝ているような時間に詩月からメールが届いていた。「今日は一人で先に行く。」としか書いてなかったけど、どうせケンカでもしたんだろうと軽く考えていた。華月の機嫌まで悪くて、八つ当たりまでされて、勘弁してくれっての。

「それなら詩月も一緒に来ればよかっただろう?」

「だから、たっくんと3人になるまでの時間が気まずかったの!」