しばらくそうやってギュウギュウ抱き締められていたのだけど、不意に「あ。」と呟いた拓真が腕の力を緩めた。
「なに?」
「忘れてた。」
そう言った拓真は私を解放してキッチンへ向かい、冷蔵庫の中から銀色のトレイを持って戻ってきた。
トレイの上にはクッキングシート。そして、その上にはチョコレートを纏ったイチゴやクッキー。
その中からイチゴを手にした拓真が、それを私の口元へと差し出す。
訳がわからず首を傾げれば、更にそれを近づけられ、「これ、どしたの?」と聞こうと開けた口に押し込まれた。
「うまい?」
必死に咀嚼しながらうんうんと頷くと、拓真はホッとしたように微笑んだ。
甘いチョコレートと甘酸っぱいイチゴ。
口の中も、心の中も幸せな気分。
「ほら、華月はくれそうになかったから、オレが作ってみた。詩月に言わせれば、作ったうちに入らないらしいけどな。」
そう言いながら、拓真はクッキーを手に取ってまた、私の口元へと運ぶ。
私は躊躇いがちに小さく口を開け、それを受け取る。
「あ、これ、私の好きなやつ。」
「だな。詩月チョイス。」
半分かじったクッキーを手に、これを選んだのが詩月だと聞いて、また嬉しくなる。つまりは、詩月はこの恋を、私たちを疎ましく思っていない、ということだから。
ふふ、と笑って残りを口にしようとしたら、横から拓真が食べた。
私の指ごと…。
噛まれはしなかったものの、驚いた私は手を引いた、つもりだった。
実際は、拓真にしっかり掴まれ少しも動かせなかったのだけれど。

