ほんの30分ほどの買い物。
帰ってきたときもやっぱりはーちゃんはまだ眠っていた。

「さ、始めますか。」

キッチンに戻って、髪をまとめエプロンを着けて振り返ると、拓真も持ってきていたトートバッグからエプロンを取り出す。ジップアップパーカーを脱いでその黒いエプロンを着け、白シャツの腕を捲る。たっくんの用意の良さとその見慣れない姿に感心する。

「おぉ。イケメンカフェ店員みたい。」

「詩月に褒められても嬉しくない。」

「はいはい。」

たっくんのあまりの一途さに感心して、呆れる。
私にもいつか、たっくんのように一途になれる人が見つかるだろうか。どこまでも追いかけたいと思える人に出会えるだろうか。

「まぁ、今はまだいいんですけどねー…」

独り言を呟きながら手を洗っていると、たっくんが隣に並ぶ。

「じゃあ、たっくんも手を洗ったら、ひたすらチョコ刻んでね。あ、これとこれ、混ぜちゃ嫌だからね?」

さっき買ったチョコレートの横に、私の材料も並べて言うと、たっくんは「ん?」と一瞬首を傾げたけれどとりあえず頷いたから、私は私の準備を始める。

「詩月はなにするんだ?」

「私は私の本命用を作ります。ので、たっくんはとにかくチョコを刻んでください。」

そうして、私たちのチョコ作りが始まった。

なんでもそつなくこなすタイプのたっくんは、手を切ることもなく私の分のチョコまで刻んでくれたし。私の方もうまくできそうだ。