今日は橘センセに渡すチョコレート作る予定だったから、一緒に作るのは別に構わないんだけど、その相手がまさかたっくんだとは思いも寄らなかった…

「わかった。じゃ、買い物行こう。」

眠れないのか朝方までごそごそしていたはーちゃんは、きっと昼近くまで起きてこないはず。
私は静かに部屋に戻り出掛ける支度をする。玄関に向かう前、こっそりはーちゃんの部屋を覗いてみると、薄暗い部屋にはーちゃんの寝息が聞こえた。

近所のスーパーが24時間営業で助かる。
土曜日の朝の8時。
スーパーには私たち以外お客の姿は見えない。

「どんなの作りたい?」

空のかごを振り回しながら、隣を歩いていたたっくんに聞くと、「んー」と考えるそぶりを見せる彼の顔には優しい笑みが浮かんでいる。

うわー、たっくんが笑ってるー

「オレでも失敗しないやつ?」

だよね。私は返事の代わりに笑って二度頷く。
よし。
簡単で失敗しないもの…美味しそうなイチゴ、マシュマロ、コーフレーク、はーちゃんの好きなクッキー、そしてミルクチョコレート…思いついたものを手当たり次第かごに入れ、レジの前でそれをたっくんに渡す。
たっくんも自然にそれを受け取ってレジを通る。

いつも不機嫌なたっくんがずっと上機嫌。
表だって、ではないけれど、いつもとは全然違う。

ほら、はーちゃん、こんなに思われてるよ?

たっくんの姿を追いながら、まだ夢の中のはーちゃんを思って、私は楽しくなってきた。