ピピッピピッピピッ…
不快な電子音を夢うつつで止めて、ノロノロと体を起こす。寝起きは良い方だけど、さすがに今朝は眠い。
昨日は結局、日付が変わる頃まで詩月に付き合ってデコレーションをした。
刻んで溶かしてハート型に固め直しただけのチョコレート。それにカラフルなチョコペンで絵を描いたり、トッピングをしたり…思いの外楽しかったから、多少の寝不足に不満はないのだけど。
昨日作った分は、クラスの友チョコらしい。
本命(?)の橘先生のは土曜日に作って、日曜に渡しに行くのだとか。
問題は…拓真の分をどうするのか。
どうして私がこんなことで悩まないといけないんだろう…と憂鬱な気分になりながらキッチンへ向かうと、珍しく詩月が起きていた。
せっせとラッピングしている。
「おはよ。手伝おうか?」
食パンを2枚、トースターに入れながら聞くと、詩月は「おはよ」と挨拶しつつ首を横に振る。
「ありがと。大丈夫。もう終わるから。あ、はーちゃん、私のトーストは?」
「一緒にしてるって。」
冷蔵庫を覗きながら答えれば、詩月から「わー、はーちゃん大好きー」と言われ、思わず笑ってしまう。たかがトーストで、と。
トーストが焼き上がる頃、詩月のラッピングも完了したようだ。ガサガサと全て紙袋に収め、そこから一つ取り出して私に差し出した。
「なに?」
「はーちゃんの分。昨日手伝ってくれてありがと。」
ニコリと笑って首を傾げながらチョコを差し出す詩月は、女の私が見ても「可愛い女子」だ。
やっぱり。
拓真だってこういう子からもらう方が嬉しいんじゃないだろうか。
ありがたく受け取りながら、そんなことを思う。