は・・・はぁ!?

開いた口が塞がらないとはこのことだ・・・何を言っているんだ、この男は?
そんな思いで、本当にぽかんと口を開けて呆ける私をフッと笑って拓真は帰って行った。

いや、私、作るって言ってないけど!?

そんなことより。
拓真が好きなのは、私じゃなくて、詩月でしょ!?
どうして、私の作るチョコ?
わけわかんない…。

…まだ、わかんないってことで、いいかな…

心の隅に湧いた疑惑を見なかったことにして、私はキッチンに戻ることにした。
短い廊下を進みながら、深呼吸する。

もう少し、このままでいられるように。
詩月だけは傷つけたくないから。
いつものようにキッチンへ戻れるように。




と、思っていたのに、詩月は楽しそうに聞いてくるし。

…楽しそう…?

もう一度詩月を見るけど、やっぱり楽しそうで、傷ついている様子なんてこれっぽっちも見られない。

「ねぇ、一つ確認させて?」

「なあに?」

「詩月が好きなのは、誰なの?」

詩月に見つめられること数秒。詩月が突然笑い出した。こちらは真剣に聞いているというのに。

「はーちゃん、私、たっくんのことは何とも思ってないよ!何とも…せいぜい兄?いや、弟?幼馴染みって言うより家族に近いかな。」

私の心を見透かしたかのように、拓真の話をしてくれる詩月。
でも、いや、だから・・・

「私が今、好きなのはー…橘先生でーすっ!」

「…え?養護の?そうなの?」

「うん。」

詩月は満面の笑みで大きく頷いた。