首を傾げながら凝視する私の前に立つと、何を思ったのか私の頬をその両手で包み込んだ。

「っ!た、拓真ぁっ!」

突然触れられたことに驚いて、優しい触れ方とは裏腹にその手が信じられないくらい冷たいことにも驚いて、私は抗議の叫び声と共に体を仰け反らせるけれど、拓真の手は私から離れない。

「なんだよ。その間抜け面もいいな、華月。」

逃げる私を追うように近づく拓真が私の顔を覗きこむ。そのいつもの不機嫌な表情の中に、見慣れないものを感じて戸惑った。

「なんか、違う…」

思わず呟いた一言に、拓真の表情が一瞬和らいで、その瞬間私の心臓が跳ねた。
慌てて拓真から目をそらす。
勝手に心拍数が上がっていく。
冷たかった拓真の手が熱く感じるのは、私が熱くなったから…?

いやいや、そもそもなんで私が拓真にドキドキさせられなくちゃいけない?
なになに?なんなの?私、どうした?

内心パニックになっていると、不意に拓真の手が離れた。見ると、作り笑顔を貼りつけた詩月が拓真の腕を掴んでいる。

「たっくん、荷物持ちありがと。お茶飲んだらさっさと帰ってね。」

拓真は詩月からカップを受け取ると、不機嫌そうにそれに口をつけた。