知られた。
本人よりも面倒なやつに知られた。
佐久間家の玄関を出たその場でオレは頭を抱えて蹲る。
「・・・あれ?知ってた、だと?」
詩月は「知ってる」と言っていた。
オレの気持ちがバレてる?
いや、でも、華月はそんなそぶり見せないし・・・
振り返りドアを睨め付け、はぁっと息を吐く。
帰ろ。
立ち上がって今度こそ家へと歩き出す。
「どうせ、ヘタレだよ・・・」
詩月の呆れた視線を思い出して舌打ちし、寝起き姿の華月を思い出して顔に熱が集まるのを感じる。
華月の制服以外のスカート姿なんて、何年ぶりだろう?
佐久間家から5分と掛からない自宅のドアに手を掛けたところで、ポケットの携帯が短い着信音を鳴らした。
とりあえずドアを開けてから確認すれば、別れたばかりの詩月からで。
『素直にぶつかればいいのに。押して押して押しまくれ。たっくんなんか、当たって砕けてしまえw』
思い切り脱力したのは言うまでもない。
でも。
砕けてたまるか。
絶対振り向かせてみせるからな。
詩月の言葉を鵜呑みにしたわけではないけど、オレは覚悟を決めた。