「どうして・・」
俺には味方ができないんだ。そう言おうとして詰まる。
自分が悪い事なんか、自分に原因があることなんか、当の昔に分かり切っていた。
彼が清水を虐め始めた理由も、雪が清水を好きだと知って嫉妬したからだ。
そんなことをしたって雪が自分に振り向くとは考えられない。
しかし彼はそれ以外の方法を知らなかった。
どうすればよいのか分からぬまま、本能のまま弱者である清水を虐げ続けていた。
・・・いや、本当の弱者は俺だ。
「好き」どいう感情を、「恋」という事実を、うまく処理できない。
辛い、苦しいでもそれ程愛おしい。
「カッコ悪い・・。」
本心だ。彼は初めて、本心を口にした。
心が軽くなった。そう思った瞬間、目から熱いものが流れていた。
善人になりたい。そう願う彼の心の叫びだ。
彼は声を押し殺して、鼻を啜りながら泣いた。


「恋スルモノ二は死ヲ望マレヌ生命二死ヲ」
雪もまた泣いていた。薄い壁を挟んだ向こうに憎い人間がいるとも知らず。

「恋スルモノ二は死ヲ望マレヌ生命二死ヲ」
雪にははっきり聞こえていた。頭痛の向こう側に聞こえる見えぬ者からの忠告。

母さん、私はそんなに悪いことをしたのですか。
なぜ、なぜ恋をしてはならないのでしょう。