えーと…無視なのかな?

それとも集中しすぎて声が届いていないのかな、と心配そうに後ろ姿を見つめる。


これでもないくらい、必死に考え込んでいるお父さん。



玄関をあけて、リビングに向かう。その間も重りをためたような沈黙があった。



「……座りなさい」

「うん」


いすに座るように言われ、お父さんと向かいあわせに座って、ごくんと喉をならした。


警察と対面する雰囲気で、取り調べを受けているような心地だった。


息をするのにも、どこか苦しい空気だった。


え、死刑判決?

ぐるぐると頭の中で、思いを巡らせる。


しかしお父さんはいきなり話題を切り出す。


「奈都、お前はこの寺のちょうど百代目の娘だ」

「……ん?」


これにはびっくりして、反応が遅れた。

もっと、どーん!って感じの話題かと気合を入れて待っていたのに、あまり重大な感じではないのかな?



「え?そうなんだあ…それがどうしたの?」


いや、いつもは突っ込み派なので、つい口調がおかしくなってしまった。