蔵を通るときは必ずお墓の前を通る。

このお墓の中の一部はお父さんの話では、半世紀前の戦争で犠牲になった人が供養してあるらしい。


住んでいるこのお寺は歴史が深い。そういう意味でたくさんのお墓がある。


夜にここを通るのは、結構勇気がいる。だから夜に通らないようにはしていた。



「お父さん…?」

少し距離のある遠い家に向かう間は、ずっと無言だった。


さすがに居心地が悪いので勇気を出して、お父さんに声をかけてみた。


「お父さん―?どうしたの…?」

「…………」



返答なしだ。


重い鉛をかついでいるように肩をさげて、一人深く考え事をしている。


急に年をとった感じで眉間にしわをよせていて、眉を下げて突然変わった態度にどうしたのかと一人で悩んだ。