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瀬那からのLINEの返信も。

瀬那にするどうでもいい毎日の報告も。

瀬那から聞こえる呆れたような溜息も。

爽やかなシトラスの香りも。

低くてよく澄んだ大好きな声も。




…何一つない、そんな毎日を過ごしてもう何日が過ぎただろう。


まるで、瀬那と付き合ってた日々が夢だったんじゃないかってくらい、枯れ果てた日常にもう、涙も枯れてしまったようだ。


瀬那から話しかけられる事なんて、もちろんないし。私から話しかける事だって、ない。


あんなに追いかけてきた人を簡単に忘れられるわけないけど、それでも少しずつ前を向いて頑張ろうって思えるまでに成長したよ。



「森坂、手止まってる。」


「あ、ごめん!ボーッとしちゃって…」



もう9月も中旬に差し掛かろうとしている。あと少しで文化祭シーズンだな。


今年は瀬那と、文化祭 回れないんだ。




「…森坂、」


「んー?」


「南と、別れたって本当?」



なぜか担任の雑用を命じられた、私と嶋中くん。明日 は異文化交流とやらで、イタリアからの留学生が5人来ることになっている。


それを歓迎するための飾りを作っている真っ最中、という訳だ。



「…えっと、…うん。」


放課後の教室に2人で花紙を折る。
なんてことない地味な作業を、なんてことない会話で過ごしていたのに。



「…やっぱ、そうなんだ。」



ここに来てその話題とは、嶋中くんも中々 強者だ。