途方に暮れていると、「あ、あの」後ろから呼び止められて立ち止まる。

振り返ると知らない男の子が立っていて。


同じ制服を着ているとこを見るとどうやら同じ学校らしいが、やっぱり知らない人だった。


「何でしょう…?」


眉を寄せて首を傾げる。


すると横から佐季がカーディガンを引っ張りながら耳打ちしてきた。


「郁、郁。誰なの、あの無駄に爽やかな黒髪ボーイは」

「さぁ、知らない人みたいだけど」


ヒソヒソと話しているとその黒髪ボーイはどんどんと近付いてきて、私との距離は約1メートルにまで縮まった。


隣では「うわー、うわー」と声にならない声を上げながら頬を赤らめている佐季。

赤くなる理由が分からないけれど。


私はただその人をじっと見上げた。


すると黒髪ボーイは思い詰めたような顔をして口を開いたのだった。