「な、に、してんの」
功に後ろから抱きしめられて、死ぬほど嬉しいはずなのに。
私のことなんて眼中にないんだと思うと、どうしようもなく辛かった。
「離してよ。私のこと妹にしか見えないんでしょ」
黙り込む功にイライラして、私は無理やり功の腕から抜け出した。
けれど、体の向きを変えて今度は正面からさらにきつく抱きしめられて。
溢れた涙と気持ちが止められなくて、ぽろぽろと流れ出る。
「私、功が好きなんだよ！だからこんな事されたら困る。諦められないじゃん！」
必死に腕で押し返すけど、功は全然離してくれなくて。
その度に涙が零れ落ちてしまう。
ぎゅっと功の腕の力が一層強まって、耳元で功が言った。
「ごめん。ごめん、俺も」
「え？」
「俺も、佐季が好き」
その言葉を聞いて一瞬、時間が止まったかと思った。
そのまま功が続ける。
「本当は約束覚えてた」
「ほんと？」
「うん。でも、あの時佐季の頭撫でたことすごく後悔してたから」
