キミ限定




家に帰ると玄関に男物の靴が並んでるのがすぐ目に入った。



会いたくないと思っていても、靴を見ただけでキュンとなってしまうのはしばらくどうにもならないんだろうな。



家庭教師、辞めようかな。



リビングに行くと、いつも通りソファの上に功がいた。



私は功を見ないようにして、水を飲むフリをしてそのままキッチンに向かった。



「おー、佐季。おかえり」

「ただいま。またお母さんに呼ばれたの?」

「違うよ。今日は佐季に用事があったから来たんだけど。おばさんまた買い物に行っちゃった」

「そうなんだ」



キッチンのカウンターから無愛想な返事をする私に気付いて、功が振り返る。



「佐季、元気ない?」

「そんなことないよ。ちょっと疲れてるだけ」

「そっか、佐季頑張ったもんなー」

「結果聞かないの?」

「聞かなくても佐季の頑張り見てたら分かるよ」

「嘘。分かんないよそんなの。興味がないだけでしょう?」

「どうした?なんか変だぞ」

「そうだよ変だよ!私ばっかり約束覚えてて、一生懸命勉強して」




私ばっかり楽しみで、功に喜んで欲しくて予習も頑張って。



「私バカみたい」



気持ちが溢れすぎて、目に涙が溜まって視界がぼやける。



こんな姿かっこ悪いから、自分の部屋に逃げようとすると、功の腕がそれを止めた。