手を繋いだまま無言で歩くあたしと伊緒。
気付けばあたしの家の前まで来ていた。
「じゃあ」
ぱっと離れてしまう手。
久しぶりに会えたのに、それだけ?
あたし他の男の子と遊んでたのに、何も言ってくれないの?
すたすたと自分の家に向かう伊緒の背中に心の中で訴える。
けれど当然、声に出して言わなければ、伊緒は気付いてくれることはない。
「やっぱり薄い」
ポツリと呟く。
すると振り返る伊緒は興味なさげにあたしの方を見ながら言った。
「失礼だな。ちゃんと鍛えてるよ」
「違う、愛情のこと言ってるの!気持ちの質量が足りないって言ってるの!
伊緒は最初からあたしの事なんて好きじゃなかったんだね」
「どうして、そんな事が言えるの」
「だってそうじゃん!付き合い始めてから、伊緒からあたしの部屋に来てくれなくなったし。
それに、一度だってあたしの事好きだって言ってくれた事ないもん!」
そこまで言うと、伊緒は大きな溜め息をついて再びあたしの腕を掴んだ。
そのまま伊緒の部屋の前まで連れて来て押し込んで、背中を押されてベッドに倒れこむ。
伊緒は覆いかぶさるようにして、あたしの顔を見下ろした。
「分かってないね、結芽は」
「え?」
「俺だって男なんだけど」
